
大学の卒業の時に一応就職しなければいけないだろうと考えていました。就職活動もして内定ももらっていたんですが、その時に私はやっぱりプロとしてやりたいと思ったんです。何がプロなのか、私がプロなのかも未だに分からないんですが、その時はプロになりたいと思いつつも現実的なことをどこかで考えて、はたして出来るのかという不安があり、凄く自分の中でゆれたんです。だけど就職してしまったら休みの日に制作をする、それで今まで通り作りたいものが作れるか、と考えた時にガラス制作が凄く難しく感じたんです。そうすると自分が到達したいレベルには到達できないっていう思いがあって、「作家やりたい!」って両親に言ったら「やればいいじゃない!」って言われました。だから本当に両親に感謝しています。
学校を卒業し、4月になって周りは就職していた中で私は就職していないからといってだらだらしてはいけないって考えて、制作を仕事として考えることにしたんです。バイトをしながらではあったんですが、プロとしてやるんだったら朝きちんと起きて、時間を決めてやろうって、社会人として絶対に8時間はやろうと、それが本格的な始まりでした。

最初は何にも解っていなかったので、学校で余っていたガラスを使っていました。自分でガラスを買った時も、どれも一緒だと思っていたので、モレッティガラスとかを買ってきちゃったりして他のガラスと一緒に使っちゃいけないというのも知らなかったので、混ぜて割れてしまったこともありました。バーナーは学生の時に、初めてキャンプ用の小さいガスボンベをつけて作業するバーナーをホームセンターで買いました。煤も入りやすかったんですが、わりと出来るんです。そのバーナーを2年は使いました。その後ワークショップで念願のエアバーナーを購入して、それをいまだに使用しています。

A,Bガラスはキナリガラスが出来た時から使用しています。Cガラスは発売された時から使っています。A、Bガラスは色味の幅がすごく細かくあって、たとえば緑だけでもたくさん種類があるので、あの色もこの色も欲しいって使っていくうちに広がっていきました。
キナリガラスは色の幅が広く、中間色のしぶい色が充実しているのが好きです。私はどちらかというと、和の色、日本的な色、ちょっと濁った色がすきなので、自分の好きな色幅があるので満足しています。

今、Cガラスになって凄く使いやすくなりました。以前はAとBでこの色とこの色を合わせたいと思っても合わせられないことが多かったんです。私自身、作品の大きい面にはわりと中間色を使って派手な色は使わないんです。そこに挿し色としてやっぱりぴりっとした色が欲しいのでAだけだったり、Bだけだったりするとうまく表現できなかったんですが、Cを使う事によって表現できるようになったんです。今後欲しい色として最近発売されたCXのような柔らかい色味、しぶい色味で、いろんな青、いろんな緑が増えてくれると作品創りのうえで嬉しいです。

キナリガラスはちょうど良い粘り気と熱もちがあるので石膏型にガラスを巻きとる際に巻きとりやすく、なおかつ巻きとってから、コテなどを使って、ガラスの表面のディテールに変化を出しやすいです。クリアの透明度がA,Cともに高く、煤が入りにくいので、他の色と重ねたり、混ぜ合わせて使ったりする事で色幅をさらに広げていくことができるのがいいですね。

実は大学受験の最初の段階ではガラスではなく挿絵とか絵本作家をやりたかったのでグラフィックデザインを勉強しようと思っていました。どちらかというと、趣味といったら変なんですが、一人っ子なので子供の頃から一人で遊ぶのが得意で、想像をしながら紙と鉛筆、ハサミや粘土を与えられると何時間でも遊べちゃう子だったんです。大人になっても遊びみたいな感覚で手仕事をやっていたこともあり、小さいものを作ることも楽しいんじゃないかって思って、絵の方から物作りの方へ、受験もグラフィックと工芸の両方を受けたんです。そうしたら工芸しか受からなくて、その時には本命が絵から工芸に変わっていたので良かったんですけどね。
絵本をやりたかった事も関係して、想像力を働かせるのが好きでそれを形にしたかったんです。だから私にとって大事な事は作品が生きていること、作品自体が語りかけてくるものでなきゃだめだって思ったんです。自分とガラスが対話して作っているものだし、生きていないとおかしいなって。型にはめて機械的に作るものじゃないし、やっぱり生き物をつくるのだから私の手から離れた後も、手にしてくださった方のところで遊んでいてほしいと思います。私はガラスと対話して作品を作っているので、見てくださる方と作品が対話をし、そこで生き生きとしていてもらいたいんです。やっぱり自分の中でも作品は宝物ですし、大事にしてもらいたいですね。ただお金になればいいっていうことではないので、やっぱり売れてしまうと寂しいんですよね。ほんとにお嫁に出すような気持ちで、大事にしてくれる人の所に行って欲しいっていう気持ちがすごくあります。作品自体にも宿る想いってきっとあると思うんです。だから、「作品一つ一つに命を吹き込む」。それが大事にしている事です。

大きなコンセプトはないんですが、なんて言ったらいいのでしょうか。歌を歌うように、自分の気持ちが揺れ動いていく中で、気持ちをのせていける何かってあるし、こんなこと言うと変なんですけど、自分の好きなものしか作っていないし、今後も気持ちの流れるままに作品を作っていきたいと思います。作り手の気持ちが作品には表れてしまうものだから、自分が楽しくないと良い作品ができないと思うんです。自分にとっても宝物になるような作品。自分も成長していかなければいけないですから、これからも生きていくなかでいろんな経験をして、自分も成長し、それが作品に反映していけばいいなと思います。